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毎回1つのお題に4人のブロガーが答えていく期間限定ブログ

早く行きたければ1人で行きなさい。でも遠くへ行きたければ誰かと一緒に行きなさい

「個人プレイの人が、コラボレーションの人になるとき」というテーマを考える場合には「普段との距離」という補助線が使えると考えています。

このようなウェブ媒体に書く文章において、テーマや文体や集客方法などが「自由」であるほど、普段とあまり変わらない内容を書いて、普段とあまり変わらない人に読まれる可能性が高くなりますが、これは「普段との距離」が近い状態であるといえます。現在のウェブサイトはパーマリンク単位で読まれる前提となっており、「どの媒体で書いているか? 」よりも「誰が書いているか?」「何を書いているか?」が重要視される可能性が高い現状にあります。

これに対して、他の媒体や人とコラボレーションする際には、内容や形式や集客方法などについて既存の型にはまったり、すり合わせる作業が発生するので、結果として「普段との距離」が確保しやすくなります。強固な意識付けがあれば独りで普段との距離を確保していくこともできるのでしょうが、なかなか難しい話です。コラボレーションにはある種の強制力があるわけですね。

なぜ普段との距離を確保したいのかと言えば、そこに行くための工程を体験しなければ分からないことが沢山あるからです。共同で描いた「あるべき姿」に近づけるために、現状との差分をバックキャスティングで埋めていく必要があるのですが、「足りてないから、なんとかしなきゃ」と思う事のが多いですし、自分だけでは考えもつかなかった場所や方法に辿り着くこともあります。

それによって、悩んだり、遅くなったりする事もありますが、そのような機会を設けなければ現状の自分だけで簡単に出来る事を繰り返してしまいがちです。『グッド・ライ』という映画に「早く行きたければ1人で行きなさい。でも遠くへ行きたければ誰かと一緒に行きなさい」という台詞があるのですが、そういうことです。実現できた「あるべき姿」は「現状」に変わって、次の機会にはより遠くを目指せるようになりますし、結果として同じ事をするのであっても、その経験は活きてきます。

とはいえ、そろそろ自分自身の圧倒的成長ばかりを考えていても仕方がなくて、他の誰かに遠くに行ってもらうための壁や踏み台や手すりとしての役割を担うのもよいと思ったりもするのですが、それはそれで「普段との距離」が確保できているんですよね。中間管理職には中間管理職の課題があります。

これまでの文章では「解体」「研磨」というキーワードが出てきましたが、僕からは「距離」というキーワードを提出します。今回のコラボレーションにおいても、ふだんより遠くに行くための方法を考えているのですが、まだまだ中途半端ですね。

この問題は結局のところで、報酬設計にあるのかもしれません。ある行動への効用を自身の感性の延長線上で考えるのは当たりの話なのですが、それが枷になってしまう事もあります。お金を払ってる側に従うとか、先生だから従うとか、信頼しているから従うといった「自身の理路とは別の権力」を受け入れていく過程がないと普段より遠くに行くための強制力が発生しにくいのです。

分かりやすい報酬が発生しないフラットな関係になるほどに別の権力が弱くなって、自身の感性の延長線上で納得できることしか出来ないようになり、結果として解体する事も、研磨する事も難しくなります。ライティングの受託をしていると、媒体によって色々な制約がでてくるのですが「お金を払ってくれる会社の編集者の意見」という分かりやすい構造があるので比較的すんなりと受け入れています。それを嫌う人もいますが、売文業としてのちんけなプライドなんてドブに捨ててきましたし、それによって生まれるものもあります。

実のところで、ここのお話をもらった時にも「独裁してくれるならやる」と言ってきました。デザインなどの足回りは僕がやる事になるのだろうから、コンセプトや進行管理は丸投げさせて欲しいということです。それは単純に「楽がしたい」というのもありますが、それ以上に「相手のやり方に合わせる」こと自体を報酬に設定していたいからです。

最初から掛け算を狙ったり、相手のフィールドを尊重するのもよいのですが、その一方で自分の世界に寄せるための強制力が結果として他の人にとっての距離を確保するための足がかりとなると考えています。期間を区切った強制力の源泉なんて「偉いから偉い」で構いません。早く行きたければひとりで行けばよいのですが、僕は遠くへ行きたいのですね。

著者プロフィール

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IT系企業に勤務の傍ら個人ブログ「太陽がまぶしかったから」を運営。情報システムの発展によって変化していく人の心や共同体のありかたに興味。恋も仕事もFA宣言中。
共著書に「レールの外ってこんな景色: 若手ブロガーから見える新しい生き方